香典返しの熨斗(掛け紙)は薄墨で書くの?のし紙の書き方とマナーを解説
葬儀の知らせを受けて会葬する場合に字を書くと言えば、香典袋(不祝儀袋)の表書きと名前、さらにはお供え物ののし紙などが代表的です。
葬儀を出す側の喪主と遺族にしても、粗供養や身内からのお供え物に対してものし紙を付けるなら薄墨で書くのが重要なマナーです。
なぜ葬儀では薄墨なのかという理由から、香典返しの際ののし紙の書き方、さらには香典返しの正しい送り方をまとめました。
挨拶状2種類!
・カード
・巻紙
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弔事で薄墨を使って文字を書く理由
訃報を受けてお通夜や告別式に参列する際に香典を持参する場合、薄墨の筆ペンを用いて表書きと名前を書くのが一般的です。 薄墨を用いる理由にはいくつか説がありますが、よく知られている説が2つあります。
- 突然の不幸で時間がなかったことを表す説
一つめが、不幸は突然起こることであり、知らせを受けて慌てて用意をすることから、十分に墨をすっている時間がないままに書いてしまったために薄くなりましたということを表しているという説です。
- 悲しみで涙がこぼれたことを表す説
二つめは、訃報を受けてご霊前に供えるための香典を用意していますが、悲しみで涙がこぼれ、涙が墨を薄くしてしまいましたという、悲しみを表した薄墨説です。
どちらが正解かははっきりしませんが、どちらの説にも納得できるところがあり、薄墨を用いるところに日本人が連綿とつないできた、故人との別れの寂しさを文字で表すことや、遺族への配慮が感じられるのが薄墨で書くという習慣と言えます。
香典袋に書くのはもちろん、通夜と告別式でお供え物を霊前に供えるなら、のし紙には薄墨で書くのがマナーです。香典袋であれば御霊前や御香典といった具合に、宗教や宗派によって変える言葉を表書きといい、水引を挟んで下に自分の名前を記載しますが、その際、表書きと名前はどちらも必ず薄墨でなければならず、色の濃さが変わるのはご法度です。
簡略化が進む葬儀
故人は亡くなった日を命日として、その後四十九日間かけて極楽浄土への旅を行うと仏教では説いています。最近は葬儀会館を利用してお葬式を行うことが多くなり、遺族の精神的、肉体的負担を減らすためにも、本来なら一週間後に行うべき初七日法要を続けて行うケースがほとんどです。
そのため、告別式直後は本来毎週行うべきお逮夜法要が一週間分飛んで二週間後となりますので、遺族はその間にさまざまな用事を片づける時間が多少はできるでしょう。
初七日法要を終えたあとは、二逮夜(ふたたいや)、三逮夜(みたいや)と続き、7回目の法要となる四十九日目が忌明けとなります。そのため、この日は通常のお逮夜法要ではなく、四十九日法要として忌明けを迎えたことの法要として大掛かりに行います。
逮夜法要は通常、お坊さんが家にやってきて毎週法要を行ってくれるため、その都度お布施を用意しなければなりません。遠方からやっているのであれば御車料を包みますので、金銭的な負担は大きいのが実情です。
したがって、初七日法要を終えたあとは四十九日法要まで逮夜法要はしないという選択肢を採る人も増えてきており、現在はそれでよしとする考え方が多くなっています。
香典返しを行うのは四十九日法要を迎えたとき
香典返しのタイミングには実は地域性があり、当日返しやその場返しなどさまざまな風習があります。またさらに、仏式と神式、あるいはキリスト教によって忌明けにあたる日数には違いがあります。
日本では仏式での葬儀が多いことから忌明けと言えば四十九日というのが、多くの人が持っている概念です。四十九日法要を終えることによって忌明けとし、故人は一週間ごとに訪れる関所を通過する、いわゆるお逮夜を終えて極楽浄土にたどり着いたとされるのが、四十九日なのです。
故人が冥途への旅を終えて極楽浄土にたどり着きましたからこそ、遺族も喪が明けたと考え、四十九日法要を済ませたことを挨拶状に記し、この時期に香典返しを行います。香典返しの品はいただいた香典及びお供え物、祭壇に飾っていただいたお花などの金額の半返しが相場とされていますので、いくつか品を選び分ける必要がありますが、すべてにのし紙を掛けるのは必須です。
四十九日法要を済ませてお返しする香典返しの品に掛けるのしは、薄墨でも良いですし、薄墨でなくても良いとされます。突然のことで用意ができず薄墨になりましたというのであれば、四十九日法要を終えるまでに準備することができる香典返しは、薄墨を使う必要はありません。
ただ、忌明けを迎えても寂しいという気持ちがある場合には、薄墨ののしにしてもよく、そこは喪主と遺族の気持ち次第と言えそうです。
香典返しの表書きの書き方
デパートなどで手配することが多い忌明けで贈る香典返しは、昨今は忌明けであると告げると自動的に薄墨でのしを印刷してくれることがほとんどです。
薄墨でなくてもよいとされますものの、せめて四十九日法要までは薄墨でと考える人も少なくないでしょう。どちらにするかで迷ったら、薄墨にしておく方がいいかもしれません。中にはお返しを受け取った相手の中に、忌明けを迎えたら早々に濃い墨で書くのかと考える人がいないとも限らないからです。
のし紙は黒白、もしくは黄白で、水引は簡単にほどくことができない結び切りを選びます。ほどけそうでなかなかほどけない「あわじ結び」と呼ばれる結び目の水引が印刷されたのし紙もあり、こちらも仏事に使える水引です。
のしの水引の色の黒白と黄白は地域による差が大きく、東日本は黒白が、西日本は黄白が多いとされていますが、絶対というわけではありません。迷ったときは黒白が無難ですが、ただ、京都ではとりわけ黄白という昔からの習慣が根付いていることから、京都の人への香典返しは黄白ののし紙を選んだ方が、違和感を抱くことなく受け取ってもらえそうです。
地域 | のし紙の種類 |
関東 | 黒白、もしくは黄白の結び切り。(黒白が多い) |
関西 | 黒白、もしくは黄白の結び切り。(黄白が多い) |
表書きで最も多いのは志です。この言葉には「気持ち」という意味があり、気持ちばかりのお礼や感謝という意味が込められています。また、仏式では忌明けの四十九日を満中陰といい、この日に送る志ということで満中陰志が用いられます。主に関西地域で使われています。さらに、忌明けを迎えることから忌明志と書くこともあり、こちらにも地域性が出るのが特徴です。
また、キリスト教や神道の場合の表書きはでは志は使わず偲び草を使用します。この言葉には、故人を懐かしむ気持ちに代わって粗品をお渡ししますという意味が込められています。
のしに関して迷ったときは
のし紙といっても黒白に黄白といった色の違いもあれば、「結び切り」や「あわじ結び」といった結び目の違いもあります。表書きにしても、志が一般的とはいえ、地域によっては満中陰志だろう、いや、忌明け志だといった具合に、ちょっとしたことが食い違いとなって口論になることが多いのも、葬儀の特徴です。
表書きと名前をどう書くかは決まりましたけれど、薄墨がいいという人もいれば、四十九日を迎えて忌明けとなったのですから、もう濃い墨で書いていいのではないかという人もいるかもしれません。
さらに宗教や宗派の違いから、キリスト教では亡くなった人は神のもとへ行くという考えが根底にあることから、このたびはご愁傷様ですといった仏式でのお悔やみの言葉は用いてはならないのです。のし紙選びで迷ったら、最近用いられることが増えてきた絵柄入りを選んでみるのもいいでしょう。水引は濃い紫と薄い紫の結び切りとなっており、蓮と百合の2つの柄があります。
仏式では蓮と百合のどちらも使えますが、蓮は極楽浄土にあるものとされているため、神式やキリスト教では使えません。絵柄入りにすることで水引の色の違いの問題は解決できますが、表書きをどうするかや薄墨かそうでないかの悩みは残りますので、悔いが残らないようにしっかりと家族同士で話しあって決めるのがよさそうです。
のし紙のつけ方
のしの付け方は「内のし」と「外のし」の2種類の方法があります。品物に直接のしをかけ、その上から包装紙で包む方法が「内のし」、品物を包装紙で包んだ後に、のしをかける方法が「外のし」です。
自分で手渡しをする場合は外のしにするのが一般的です。香典返しを配送する場合は、のし紙が破れてしまわないように注意が必要なため内のしを選びましょう。
渡し方 | のしの形式 |
手渡しする場合 | 外のし(包装紙で包んだ後に、のしをかける) |
配送する場合 | 内のし(のしをかけた後に、包装紙で包む) |
まとめ
香典返しは葬儀にあたって香典をいただいたり、お供え物や祭壇のお飾りなどをいただいたりした方へお礼として渡す贈り物です。仏式に神式、さらにキリスト教など宗教によって香典返しを行う日数は異なりますし、のし体裁もさまざまなことから、意外と手間取るのが香典返しでもあります。
のしの表書きの言葉から薄墨にするべきかどうかまで、しっかりと考えて行うのが香典返しを失礼なく終えるためには重要です。
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